適度に日光を浴びる人は長寿の傾向が示される
太陽は、人類が誕生するはるか以前から地球を照らしていた。それが今ごろになって賛否両論を生むほどの議論の引き金になっている。近年、「屋外だけでなく室内でも日焼け止めを塗るべき」という考え方が広がる一方で、日焼け止めに含まれる成分の安全性や、日光がもたらす健康効果を見直すべきだという意見も聞かれるようになった。
こうした議論を掘り下げたのが、ジャーナリストで作家のローワン・ジェイコブセン氏による新著『In Defense of Sunlight(日光に罪はない)』(2026年6月刊、未邦訳)だ。同書では、近年蓄積されてきた研究をもとに、日光が人体にもたらすメリットや、現代人のライフスタイルが抱える課題について考察している。
ジェイコブセン氏は、「過去数十年にわたり蓄積されてきた膨大な疫学的証拠から、適度に日光を浴びている人は、そうでない人に比べて死亡率が低く、長寿である傾向が示されている」と述べる。これは運動習慣や食事、社会経済状況(教育・収入・職業などを総合的に評価した指標)といった交絡因子(原因と結果の双方に影響を与え、見かけ上の相関を生み出す要因)を考慮した研究結果だという。
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また、日焼け止めを塗らずに適度な日光を浴びることで、一酸化窒素の働きによって血圧が低下し、ビタミンDが生成されると説明する。
「ビタミンDは、フリーラジカル(不対電子を持つ原子や分子を指し、体内で有害な作用をもたらす)や損傷した細胞から体を守る重要な分子です」とジェイコブセン氏は語る。さらに、自然光に含まれるさまざまな波長が人体に多面的な影響を与えている可能性があると指摘する。
一方で、ジェイコブセン氏は「このテーマは長年、科学的知見に基づいた議論が十分になされてこなかった」とも主張する。その背景には、日光に関する研究成果が一般社会へ十分に浸透してこなかったことがあるという。
今回はジェイコブセン氏に新著の刊行に際し、基本的なポイントについて解説を求めた。以下は、彼自身の言葉で語られた発見の数々である。
屋内中心の生活がもたらすリスクとは?
20世紀初頭まで、皮膚がんは比較的まれな疾患でした。発症率が大きく上昇したのは第2次世界大戦後です。
当時の公的文書を読むと、皮膚がんの増加をすべて太陽のせいにしているものが少なくありません。まるで、それ以前の人類は日光を浴びていなかったかのようです。しかし、それでは説明がつきません。
1935年には、コニーアイランドの海岸で水着姿の人々が日光浴を楽しむ写真も残っています。さらに興味深いことに、皮膚がんの増加は日焼け止めが普及し始めた時期とも重なっています。また、人々が屋外で過ごす時間が減少した時期とも一致しており、それを示すデータもあります。
つまり、皮膚がんの増加を「日光を浴びすぎたこと」だけで説明するのは難しいということです。20世紀以降のライフスタイルの変化も関係している可能性があります。もちろん、日光も原因のひとつではあるでしょう。しかし、人類は何百万年もの間、皮膚がんに悩まされることなく、屋外で活動してきたのです。
以前の人々は一日中屋内で過ごすことがなく、そのため皮膚の状態が現在とは違っていました。現在は普段ほとんど屋内で過ごし、休暇の時だけビーチで強い日差しを浴びるという生活を送る人が増えました。私は、このような断続的な日光曝露(ばくろ)が問題ではないかと考えています。
普段から日光に慣れていない皮膚が、急に強い紫外線を浴びることで大きなダメージを受けます。ビーチで長時間日焼けをするような強い日光曝露にはリスクがあり、メリットはないと考えています。
実際、農業従事者は毎日のように日光を浴びていますが、メラノーマ(悪性黒色腫:悪性度の高い皮膚がん)の発症率は比較的高くありません。一方で、断続的に強い日焼けを繰り返す人では発症率が高いことが知られています。
皮膚がんの増加と日焼け止めの普及、その関係をどう見るべきか?
日焼け止めより先に普及したのはサンオイルでした。当時はUVB(紫外線B波)だけを防ぎ、肌を焼きやすくする製品が主流でした。UVA(紫外線A波)の危険性はまだ十分に認識されていなかったのです。
過去には、日焼け止めを使った人のほうが皮膚がんの発症率が高かったことを示す研究もありました。私は、その理由の一つとして、当時の日焼け止めがUVBしか防いでいなかったことがあると考えています。
私と同世代の多くは、「日焼け止めを塗れば安全」と考え、長時間ビーチで過ごしていました。しかし実際には、多量のUVAを浴びていたのです。
UVAはフリーラジカルの生成を促します。そして、その蓄積が皮膚がんの発症に関わる可能性が指摘されています。
1990年代以降、この問題への認識が進み、UVAにも対応したブロードスペクトラム(広範囲スペクトラム)の日焼け止めが主流となりました。現在では、こうした製品を選ぶことが重要です。
また、日焼け止めの成分は以前考えられていた以上に体内へ吸収されることが分かっています。ただし、現時点では、それが人体に有害であることを示す十分な証拠はありません。
日焼けマシンは本当に安全なのか?
日焼けマシンについては、メラノーマとの関連性が明確に指摘されています。
人工の日焼けマシンは主にUVAを照射するため、皮膚が赤くなりにくく、安全だと思われがちです。しかし、自然光の中にはさまざまな波長の光子があり、人類は長きにわたって、それを浴びてきたのです。特定の波長だけを切り分けて肌に浴びせるという経験は、人工照明が発明されるまでありませんでした。体がそのような状況にうまく対応できるとは思えず、問題の一因となっている可能性があります。
日光の健康効果はいつから研究されてきた?
このテーマを調べ始めた頃、私は最新の研究によってすべてが明らかになると思っていました。しかし実際には、現在語られている内容の多くは、何十年も前から少しずつ積み重ねられてきた研究成果だったのです。
問題は、それらの研究が広く社会に伝わらなかったことです。
研究成果がどれほど価値のあるものであっても、それを発信する仕組みや資金力がなければ、多くの人に届きません。価値の高い研究が、世間に認められるとは限らないのです。資金力があり、広報される研究のほうが広まりやすいといえます。
さらに、心理学用語で「アンカリング・バイアス(アンカリング効果)」と呼ばれる心理効果もあります。人は最初に信じた情報を簡単には修正できません。
皮膚がんを減らすことを目的に、行政は長年にわたり、「日光は危険であり、皮膚がんの原因になる」というイメージの刷り込みを続けてきました。そのため、事実はそれよりも複雑であることがなかなか受け入れられず、無意識による否定的反応が生まれているのだと考えられます。
適切な日光浴の時間はどれくらい?
私から言えることは、とてもシンプルです。
日光を浴びること、そして浴びすぎないこと。さらに、できるだけ屋外で過ごす時間を持つことです。
日光浴の目安時間は?
万人に共通する時間はありません。住んでいる地域や季節、肌の色によって適切な時間は異なります。私が問題だと考えているのは、日光を浴びすぎることよりも、日光不足のほうです。
一つの目安としてビタミンD濃度があります。どれだけ日光を浴びているか/いないかを測る上での指標になるからです。
ビタミンD濃度を25ng/mL程度に保つには、肌の白い人で10〜15分程度、オリーブ色の肌ならその約2倍、さらに色の濃い肌では、それ以上の日光浴が必要になる場合があります。
ただし、色白の人や赤毛の人、ほくろが多い人はメラノーマのリスクが高いことが知られており、より慎重な紫外線対策が必要です。
冬でも日光を浴びるメリットはあるのか?
冬でも日光には恩恵があります。
太陽光の約半分を占める赤外線には、ミトコンドリアの働きに関わる健康効果があることが認められています。ミトコンドリアは炎症反応や免疫機能とも関係しており、心血管疾患やがん、アルツハイマー病など加齢に伴う疾患との関連も研究されています。
しかし、免疫系の暴走は、ミトコンドリアの機能不全によるものではないという見方が有力になってきました。赤外線を浴びるには屋外に出るだけで十分ですが、室内照明からはほとんど得ることができません。赤外線は衣服を通り抜けて体内の細胞に届き、健康に寄与することが認められています。これが、赤外線治療が皮膚科などで広く用いられるようになった理由です。
日光を管理するアプリは必要なのか?
情報を記録するという意味では役立つかもしれません。しかし私は、日光を浴びることはもっとシンプルに考えてよいと思います。洞窟から外へ出るだけで十分なのです。それほど自然な行動に、必ずしもアプリは必要ないのではないでしょうか。
Source / Men's Health US
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳である。












